照屋勇賢 (沖縄)

1. 照屋勇賢「結ーい、結ーい」
2. カラー・ザ・ワールド
3. 警告の森

1. 照屋勇賢



「結ーい、結ーい」(麻に着色 180×140cm)


ニューヨークで活動している沖縄出身アーティスト照屋勇賢は、全てのプロジェクトにおいて、彼が暮らしている環境に対し鋭い盗撮力を持ってアプローチしています。彼の作品は自然と消費主義の繋がりを、伝統的でありなおかつ現代的でもある素材を取り入れながら辿っています。

「結ーい、結ーい」は、2002年に東京で行われたVOCA展にて奨励賞を受賞した作品です。この混成作品では、照屋氏は伝統工芸として沖縄に伝わる紅型を利用し、着物を作成しています。作品をよく見てみると、パラシュートや米軍の戦闘機が、菊の花や水しぶきとともに並行して配置されており、現代の沖縄における政治的緊張を沖縄の伝統を作品の中で上手く融合しているのが分かります。沖縄において戦闘機を目にするのは日常の行為であり、またジュゴンの周りを飛んでいるヘリコプターは、新しいヘリポートが沖縄に今なお生きているジュゴンの生息地域を侵食するのではないかという作者の思いが反映しています。

2. カラー・ザ・ワールド

この作品は、照屋氏がセプテンバー11のテロに触発されて作った作品です。照屋氏は、テロ以降のニューヨーク市が星条旗で埋まっているのを目の当たりにし、アメリカという国の、一つのシンボルの元にしかアイデンティティを見出せない所にもろさを垣間見たと言います。

この作品では、196枚の旗がシンプルに地理的配置に即して並べられています。その結果、たとえば緑色を基調とするアフリカの旗が集まる地域においては、隣り合う緑色の色と国旗が溶け合い、国境線が繋がるという現象が起こります。この旗によって、照屋氏は地理的な状況というのがその地域に共通のアイデンティティを創造しており、その共通点によって国家という枠組みそのもののアイデンティティの解体が可能である、という事を視覚化するのに成功しています。またこの旗の作品では、大国も小国も平面状で同等に扱われており、照屋氏の古き良きインターナショナリズムに対するノスタルジーが伺えます。

3. 警告の森

 

作品「警告の森」では、大量消費と森林の連鎖を描いた作品です。紙袋に示されているファーストフード・レストランは消費社会の典型であり、事実、これらの企業は地球規模での環境破壊を招いています。

この作品において、照屋氏は木の精神を復活させようと試みています。照屋氏はアリストテレスの自然哲学、すなわち潜在性から実在への発展は自然から学ぶ最も重要な相である、という言葉に影響を受けています。この言葉の例として、どんぐり、すなわち樫の木の種が成長するためには、既にその種に樫の木になる可能性が含まれているという事が挙げられます。同様に、完全に成長した樫の木は、どんぐりの潜在性の証明となるわけです。照屋氏はこれら元々木から生産されている紙袋の表面には、まだ木の精神が宿っていると考え、彼の技術によってその紙袋に宿る木の精神を再生させようと試みています。

(C) Copyright Shinya Watanabe

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